魔道祖師のアニメを見はじめたけど、名前が覚えられない。なんであんなに種類あるの。
それな。
私も魔道祖師にはまり、噂の「古代中国物はキャラの名前が覚えられん」「呼び方が多彩すぎて誰が誰だか」問題にぶち当たりました。
そこで今回は、自分の勉強を兼ねて中国人の名前について調べたことをまとめます。
- 号・姓名(諱)・字(あざな)の違いと距離感のまとめ
- 親しい人限定の呼び方
- 「哥哥」に含まれるニュアンス
ちなみに、魔道祖師に沼った話はこちらの記事でまとめています!
関連記事:「中国ファンタジー小説『魔道祖師』に壮絶に沼った話」
またキャラの名前の呼称一覧と主要キャラの名前の由来についてはこちら。
関連記事:「『魔道祖師』登場キャラの名前と呼び方・読み方・由来まとめ!」
号・姓名(諱)・字(あざな)の違いのまとめ
魔道祖師には主に4つの呼び方が出てきます。
推しの江澄を例に説明すると、表のようになります。
種類 | 例 | 解説 |
---|---|---|
号 | 三毒聖手 | 称号。目下の人や他人が呼ぶときに使いがち。 |
字 | 晩吟 | 通称。称号や役職名のない相手を呼ぶときは字が使われることが多い。 |
姓名(諱) | 江澄 | 本名。親しい人同士が使う呼び方。 |
阿+(名前の一部) | 阿澄 | 家族レベルで親しい人が使う呼び方。日本の「◯ちゃん」「◯くん」に近い。 |
関係性が近い人ほど『姓+名』や『阿◯』で呼び、知人レベルの相手は『姓+字』や『号』『役職』を使います。
号以外にも「江の若様」や「江宗主」と立場・役職で呼ばれるシーンも多いですね。
ただし姓をつけずに字だけで呼ぶ場合は、これまた親しい間柄だけのようです。例えば藍家の人たちはお互いを字だけで呼び合ってます。
「名」を呼べるのは親しい人だけ
昔の中国では、親しくない間柄で直接名前を呼ぶことはマナー違反でした。
しかし、中国には日本の『さん』や『殿』にあたる言葉がない!ということで、そこまで親しくない人は『名』の代わりに『字』を使ったわけです。
作中でも主人公は周りから「魏無羨(うぇいうーしぇん)」と『字』で呼ばれまくっているし、江澄もあまり仲良くない藍忘機からは「江晩吟」と呼ばれてますよね。
でも江澄は義兄弟の主人公を『字』で呼んでるよ?
母の虞夫人を気遣って、一線を引いた呼び方をしているのだと思う。ドラマ版『陳情令』では「阿羨」と呼ぶタイミングがあるんだよね。
なお中国では『姓+名』のフルネーム呼びが基本。名付けは、漢字の意味はもちろんのこと、姓を含めたトータルの響きを大切にするそうです。
また姓も阿もつけずに『名』だけで呼ぶことは滅多にしないそう。例えば小説版だと、主人公の名前「嬰」を単体で使ったのは養父だけです(それも1回、手紙のなかだけ)。
いずれにせよ『名』を呼ぶのは親しい間柄だけって覚えておくだけで、物語の解像度が上がります。
親しい人限定の呼び方
作中では、他にも親しい人限定の呼び方が出てきます。
使い方 | 例 | 解説 |
---|---|---|
阿◯ | 阿澄 | 「〜ちゃん」「〜くん」に近い。弟や妹、子ども、恋人などを呼ぶときに使用する |
◯哥哥、◯姐姐 | 江哥哥 | 「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と年上や身内に甘える呼び方 |
『阿+(名前の一部)』は日本人が年下を呼ぶときに「ちゃん」を付けるようなニュアンスです。主に姉上が弟達を呼ぶときに使いまくってますよね。
どっちかというと『小+(名前の一部)』『小+姓』のほうがよく見る気がしますが、『小』は年下の人を呼ぶときの敬称にも使われますので、『阿』のほうが意味は限定的です。
また、幼児期のあだ名として「羨羨」とか「綿綿」のように名前や字の一部をくり返す呼び方も使っていますよね。
パンダみたいだと最初思いましたが、そもそもパンダの名付けがこのニュアンスで付けられているのでしょう。
日本人的には太郎君を「たーくん」と呼ぶようなものだよね。
主人公が初対面の女の子を「綿綿」と呼んで、「はぁ?(ドン引き)」て反応されてたけど、意味を知ると納得。
余談ですが、十二国記の大ファンの私は、『阿』の本場の使い方を魔道祖師で知ってから「阿選」という名に複雑な気持ちを抱いています。
「哥哥」を使いまくるのは何故?
魔道祖師でやったら出てくる『哥哥』という呼び方(日本語訳では「お兄ちゃん」「◯◯兄さん」と訳されています)。
本来は兄弟間の「お兄ちゃん」という意味ですが、友人同士でふざけて言い合ったり、夫婦間で妻が夫を呼ぶときに使われたりしています。
やたらマルチに登場するので、ニュアンスが掴みきれない。
調べて見ると、日本人でいうところの「◯◯の兄貴!」みたいな意味もあるのだとか。お調子者の聶懐桑は同級生を「魏哥哥」のように呼んでいますが、あれには甘えと親しみが込められていたわけですね。
また妻が夫を「哥哥」と呼ぶシーンもあります。そういうプレイかと勘違いしかけましたが、じつは恋人や新婚さん(ていうかバカップル)が使うこともあるそうです。
しかしながら、彼氏や夫をお兄ちゃん呼びって、日本人にはあまり馴染みのない感覚です。近いニュアンスを持つ言葉が、そもそも日本語にはないのでしょうね。
この辺は翻訳の限界を感じるね。
やはり沼ったからには中国語を学んで原作へ進むべきなのか…。
呼び方を制する者は中華作品を制する、かもしれない
魔道祖師をはじめ、古代中国モノを読むにあたって避けては通れない”呼び方が多彩すぎてキャラが把握できん”問題。
しかし、呼び方1つでキャラの関係性・心理的な距離感が伺い知れるという点は、読者として非常にエモいし美味しいポイントでもあります。
また中華圏の方と仕事をすると「チャーリー」や「ベティ」など、なぜか英語名で名乗られることがありますよね。あれも『字』の名残だと思うと、文化って面白いなぁと感じます。
「学校の英語の授業で使った名前をずっと使ってる」て台湾の人がいました。
仕事で英語を使うことが多いから英語名が人気だけど、基本は本人の好きに付けるらしいです。
慣れないうちは、一覧表を作るとわかりやすいです。名付けの意味を考えつつ読むと、さらに面白いですよ!
三毒って号をあのキャラに付ける皮肉が凄い
【参考サイト】
中国語スクリプト「中国語で「さん」「様」「君」「ちゃん」などの名前の呼び方・敬称」
中国語スクリプト「字(あざな) 【中国の歴史上の人物名に使われる「字」の意味と理由】」