海外の翻訳小説ながら日本語版の売上が累計35万部を突破した小説があります。
『魔道祖師』作者:墨香銅臭(モーシャントンシウ)。ジャンルは中国ファンタジー小説です。
でね。壮絶に沼ったんですよ。
もう転がり落ちるように見事に。飛び込み競技かよってレベルで壮絶に。
Into the 沼。
特定の分野や作品に「ハマる」「夢中になる」「のめり込む」を意味する通俗表現
沼りすぎて苦しいから、沼ったことを記事にします。
きっかけは友人の熱い布教
あれは残暑も厳しい9月のこと。
Twitterで知り合ったオタク友達から、急にLINEが送られてきました。
チカさんや、中華BLに興味がないかね?『魔道祖師』っていうんだけど
新たな扉の気配……!!!
私はアニメや漫画が好きなオタクとして、媒体・ジャンルによらず、面白い作品に対して常に広く門戸を開いています。どんなジャンルだろうが、面白ければ何でもウェルカム。
ただ商業BLに対してはほとんど触れたことがありませんでした。
というのも、どうも私がオタクアンテナを張るエリアと、BL作品群の棚が違う……。
漫画の『青い花』や『オハナホロホロ』、アニメの『ユリ熊嵐』のような女性同士の恋愛が描かれた作品はけっこう網に引っかかるのに、本格的に男性同士の恋愛を描いたものはさっぱりキャッチできなかったのです。
商業BLはノー知識だが、それでも面白く嗜めるなら、ぜひともご教示いただきたい。
任せたまえ!
ここから、友人の怒涛のプレゼンが始まりました。
実際は長文メッセージ×30個くらいの狂気を感じる布教LINEがきたのですが、全文載せるとそれだけで1記事になるので要約します。
- 舞台は古代中国。妖魔や邪祟が跋扈して人々に害を及ぼすダークファンタジー的な世界観の作品である。
- 妖魔を退治できる力をもった人たちは仙師とか導師とか呼ばれ、貴族のような権力を持って世の中を治めている。主人公はとある名門の仙師一族に養子として引き取られた少年。乱世!乱世!の結果、世の中の恨みを集めすぎて若くして死去したが、死後十数年後に禁術で復活させられ、自分の死にまつわる謎を追うことになるーー。
- 『魔道祖師』の原作は小説だが、アニメ、実写ドラマ、ラジオドラマなど中国でさまざまなメディアミックスが展開されている。
- 原作の日本語訳版が日本でも展開されており、アニメは豪華日本人声優による吹替版が配信されている(その後、ドラマ版も来た)。
- 中国では同性愛表現が規制されているため、原作小説はBLカテゴリーだが、アニメとドラマでは恋愛描写が省かれたり、友情描写へ変換されたりしている。
- これにより「逆に解釈の幅が広がって良い!」「制作側があの手この手で検閲に引っかからないレベルの匂わせを出してきて趣深い」との声もある。つまり、1粒で2度も3度も美味しい作品である。
んん?表現規制されてるのに原作はBLって可能なのでしょうか?
もちろん中国では出版規制の対象。だから表現が自由な台湾経由で出版するらしい。
「いやそれ規制の意味〜」となりますが、出版と輸入では規制水準が異なるため、よく使われる手法らしいです。
しかしながらBL……というか恋愛ものもさまざまなわけで。
恋愛とか言っといて主軸はミステリーだったり、ホラーだったりするケースもあるわけで。
さらに恋愛主軸でもプラトニック〜官能小説まであるわけで。
ぶっちゃけ子どもと一緒に見られるやつですか!?
アニメもドラマもまったく年齢制限が必要な描写はないから大丈夫。小説版についてはぁ、チカさんはぁ、いい大人だよねぇぇ?
オーケーだいたい把握した。
ということで、まずはアマプラのアニメからいってみました。
アニメ版のストーリーがミリも理解できず困惑
布教の激しさに流されてアニメを見始めたわけですが、ここでまさかの衝撃が走ります。
キャラクターの名前が覚えられん。
3話まで見たのに主人公の名前すらまともに覚えられん……!!!
日本人作家の中華ファンタジー作品はいくつか読みましたが、やっぱり日本人の感性で書かれているんですねー。本場の名前はウルトラスーパー覚えにくい。
- 日本では滅多に名付けに使わない漢字のオンパレード!
- 読み方がカタカナ読みで全部似てる!!
- なんか1人に名前がいっぱいあるぅ!!!
例えるならこんな感じ。
キャラクターあたりの情報量が…!情報量が多い…!!
少なくとも姓名・字の2点セット×ふりがな=4セットがキャラ紹介の数秒間に表示されるのですが、「ふぁ!?」って声でるレベルで情報が右から左に横滑り。
昔の日本でも名前の呼び方で相手との関係性を示す文化があったように、古代中国でも上下関係や親密度によってお互いの呼び方が異なります。
つまり、1人のキャラが同シーンでさまざまな呼び方をされるわけ。はー!?覚えられん!
名前については、以下の記事で調べたことをまとめているので、私と同じく混乱している人は参考にしてみてください。
関連記事:「字ってなに!?呼び方で分かる関係性の面白さ|「古代中国モノの名前が覚えられん」問題を攻略しよう」
さらに会話…とくに何かを説明するセリフが非常に早い。体感で1.5倍くらい国産アニメより早い。
「中国語のセリフに合わせてシーンを作る」→「シーンに合わせて日本語へ吹替えをつける」となるので、多少スピードが合わないのは映画でもよくあること。
しっかし早いんだわこれが。
”物事を伝える”という意味で、中国語は日本語より効率が良い言語なのかもしれません。
結論:わけわからん。
主人公の魏無羨(ウェイ・ウーシエン)を覚えたのがやっと7話過ぎたくらいだったと思います。
ちなみに、こちらが視聴中に私が友人へ送りつけた発言です。
はっきり言って面白いとかつまらないとか判断できるレベルまで理解できていない。友人の応援と解説がなかったら途中でやめていたと思います。
ただ、日本のアニメでは多くが作画崩壊に陥る10話近くになっても作画クオリティを保っているのは驚きました。
アニメのクオリティも安定感も素晴らしい。”創作”にきちんとお金をかけているのが伝わってきます。
日本では、残念ながらクリエイターや研究者といった”0から1を作り出す人””スキルのある人”を安く買い叩く状況が続いています。「これはもうサブカル分野でも中国に抜かされるな」と強く感じました。
そんなこんなで見続けて15話。
あれ…急に面白く……?
え、うそ、夷陵老祖デビューライブあたりから急に面白くなってきた。恋愛フラグまったく感じ取れないけれど、不穏な気配がすごい。
わかるー!闇属性は崩壊の足音でテンション上がるよね。
人聞きが悪い。
いやでも、やっと伏線を張り終わりドミノが始まったような面白さが急に…!!きたぞ…!!!
って思ったら、2期終了。
は?
は??
ここからでは…?え???
ちょ、2期の最後で新たな謎が吹き出して終わるとかある?
つか最終回のタイトルが『更なる謎』て!!!
え、あの、これ、3期は…?
3期は中国本土で放送中でーす!続きが知りたかったらドラマか小説いってくださーい!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!!!(藤原竜也叫び)
原作の翻訳版小説が面白すぎてひっくり返る
続きが気になりすぎたので、友人から原作小説(日本語版、全4巻+番外編)を借りて読み始めました。
魔道祖師は主人公の過去話と現在の話の2軸で話が進むのですが、原作小説は1巻からしてアニメと構成が異なり、一気に引き込まれました。
現在と過去の絡ませ方が非常に巧み。構成1つでここまで話の魅力が違うのかと感動するレベルです。
伏線の張り方も上手く、絶対に回収するので読み進めていて安心感があります。恋愛感情を含めて、人物心理の描き方が絶妙でびっくり。
アニメではミリも感じ取れなかったが、これは大恋愛なのでは…?
おわかりいただけましたか。
縦糸が大恋愛、横糸が乱世・復讐・裏切り・策略、全4巻に渡ってドロドロの人間ドラマが繰り広げられます。
主人公の恋愛模様もさることながら、他の展開が面白すぎてひっくり返りそうでした。
謎解き要素のある作品ではあるものの、「黒幕1人が糸を引いていました」って単純な形ではなく、策略と策略と人間ドラマがぶつかり合って誰も制御できない所へ転がっていくような複雑なストーリー。
主要な登場人物でスピンオフ作って欲しいくらい人物描写に深みがあります。
メインの伏線が回収された上で「あれはこういう解釈でいいの?」と余白を残す物語の余韻にも感服。
読み終わったあと「ああ、生きててよかった。読書が趣味でよかった」と本気で思いました。
そして気づいたら全巻買ってましたよね。
傑作すぎて本の形で手元に置きたい。
「いつ販売ストップするかわからない…ほんと…そうなったら悔やんでも悔やみきれない」
そう思ったら本屋へダッシュしていました。
『魔道祖師』の日本でのメディア展開を整理する
スケキヨかよってレベルで沼に頭から入ってしまったため、今は実写ドラマの『陳情令』を見ています。
魏無羨の俳優さんの顔がいい!顔がいい!!!
綺麗すぎて一時停止しまくっちゃうよね。さすが14億人いる国っすわ。
ここで、魔道祖師のメディア展開を整理します。
まずは魔道祖師の日本語翻訳版(小説)。これは全国の書店やAmazonなどで紙・電子書籍版が買えます。
その他のメディア展開は以下の通り(主要サブスクのみ調べました)。
タイトル | 媒体 | 配信・販売先 |
魔道祖師 | アニメ | |
魔道祖師Q | アニメ | WOWOWオンライン |
陳情令 | 実写ドラマ |
U-NEXT |
魔道祖師 | ラジオドラマ |
mimi FM(Twitter) |
漫画(日本語版)は2023年12月22日発売予定です。
ということで、日本語で楽しもうと思うと以下の5つです。
- 原作小説
- アニメ
- 実写ドラマ(陳情令)
- ラジオドラマ
- 漫画
1つのサブスクで全部網羅できないのが残念ではありますが、どれか1つ選ぶならアニメ版、ドラマ版、ドラマ版の番外編が見られるU-NEXTがおすすめです。
私も契約していますが、中華時代劇が豊富で電子マガジンも読み放題なので重宝しています。
ちなみに友人いわく「この日本語のセリフ、中国の原作だとこんな感じなのかー」ってのが分かるから、繁体字版小説もおすすめとのこと。
(輸入なので流石にちょっと高い)
「いや、繁体字わかりませんし」て言ったら、
『書籍の画像を読み込んで機械翻訳』+『ジャパニーズ漢字能力』=魔翻訳☆
これでいけると言われました。
「さすがに狂気だろ」って思いましたが、他の墨香作品の『天官賜福』とかは日本語訳がまだ来てないので、もしかしたら魔翻訳チャレンジするかも知れません。
『天官賜福』翻訳版発売決定しました!!ありがとうございます!!
終わり。